ケブカスズメバチ

Vespa simillima simillima

<収穫>

さて、このハチが本当は何という種類のハチなのかを突き止めなければなるまい。

そこで、乳酸飲料水を使って成虫を捕まえることにした。

乳酸飲料水が3分の1位入った容器を巣のそばに置いた。


おいしいよ!
ソフトカツゲン、美味だ

30分位して戻ってみると、一頭も入っていなかった。

そこで、キノコ採り用の網を使って捕る事にした。

補虫網と違って、網を二つに折ることが出来ないので、蝶などの捕獲は無理だ。

巣に戻ったハチを網ですくうと、ハチは網をしっかり足で捕まえて、かじっていた。

逃げようともがく蝶とは対照的に、簡単に捕まえる事ができる。

そのハチをフィルムケースに入れて持ち帰った。


このハチを良く観察すると、頭部の単眼の周囲が黒く、

小循板と呼ばれる胸部後方に四個のオレンジ色の斑点を確認した。

また、からだ全体が毛深いのも特徴の一つだ。

これは、Vespa simillima simillimaに違いない。


ケブカスズメバチ
マルで囲んだところに、斑点が二つずつある



11月に入って、いよいよ寒くなってきたので巣を見に行った。

かつてのように巣穴からハチが出入りしている様子はない。

巣のある木に一頭のケブカスズメバチが止まっていたので

フィルムケースで捕獲した。

ところが、そのハチの動きが異常に遅いのだ。

スローモーションを見ているかのように、足をゆっくりと動かしている。


今がチャンスだ!

近くにある、落ち枝を拾って洞の中の巣を壊した。

中から、すでに使われなくなった育房が出てきた。

中を覗いてみると、巣盤は幾重にも重なっていた。


巣盤



巣の底をすくうとハチが出てきた。

大きなスズメバチもいる。

オオスズメバチか?

オオスズメバチは

ケブカスズメバチの近縁種であるキイロスズメバチ(Vespa simillima)

の巣を集団で襲う事があるそうだ。

ハチ捕りおじさんに、木の外側の巣を取られたことによって、

ケブカスズメバチの巣全体が攻撃に弱くなって、

オオスズメバチにやられたのだろうか。

そして、オオスズメバチがケブカスズメバチを襲ったものの、

寒さにやられて、オオスズメバチもケブカスズメバチと共に

動けなくなってしまったのではないか。

私は、そんな仮説を立ててみた。


さて、巣の裏側にまわると、木に穴が空いて中が洞になっている。

つまり、巣のあった洞は筒抜けになっていて、裏側にも穴が空いていたのだ。

裏側の穴は、表の穴より低くなっていて、

裏側の穴から拾った枝を差し込むと、巣の底に当たった。

そのまま、底を壊すと、最下部の巣盤と十数頭のスズメバチが出てきた。


筒抜けになっている
表の穴から覗いたところ



ケブカスズメバチとオオスズメバチと思われる大きなハチが

混ざり合って、もがいている。

中には羽をふるわせる物もいるが、飛べないようだ。

この中のオオスズメバチと思われる一頭をフィルムケースに捕獲した。

最下部の巣盤には、幼虫と蛹が入っていた。

ほんの十数匹だが、試食するには十分だ。


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